日本ロレンス協会 The D. H. Lawrence Society of Japan

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石原浩澄

日本ロレンス協会会長
立命館大学教授
石原浩澄

D・H・ロレンス(David Herbert Lawrence)は、1885年に生まれ1930年に没した英国の小説家・詩人・思想家です。炭鉱夫の家庭に生まれながら、その知性と鋭敏な感受性で早くから詩や小説を書き始め、『息子と恋人』で若くして小説家としての地位を確立しました。その後『虹』の発禁処分や第一次世界大戦などで苦しみますが、終戦後英国を飛び出し、イタリア、
セイロン、オーストラリア、アメリカ合衆国、メキシコへとグローバルな旅を展開し、その体験
をもとに多くの小説や旅行記、随筆なども書き残しました。

従来『息子と恋人』や『虹』、『恋する女たち』といった英国を舞台とする初期・中期小説が傑作とされてきましたが、近年では環太平洋地域を舞台とした『カンガルー』や『羽鱗の蛇』等の後期小説も再評価されています。 また、彼の随筆集である『不死鳥』シリーズには、ロレンス独自の興味深い発想がいたるところで見出せます。

文学に限らず、芸術作品には「表現の自由」という問題が時に付いてまわります。ロレンス文学も例外ではなく、特に最後の小説となった『チャタレー夫人の恋人』に関しては、英米のみならず日本においても、芸術表現か猥褻表現かをめぐって裁判が起こされました。こうした問題作も含め、様々な価値ある作品を残したロレンスは幅と深さを有する作家であり、『ユリシーズ』の作者ジェイムズ・ジョイスなどとともに、英国モダニズム文学の巨星として認知されています。また、現在はウェストミンスター寺院の「詩人コーナー」に、イギリスの文化に貢献した文豪として記念碑が収められています。

日本ロレンス協会は1969年に設立され、現在100名弱の会員を擁しています。会員は英文学研究者が中心ですが、文学愛好者の方々もいらっしゃいます。毎年、(コロナ禍に見舞われたこの3年はオンラインでの開催を余儀なくされましたが)各地の大学で年次大会を開催し交流を深める一方、毎年、学会誌『D. H. ロレンス研究』(1991年創刊)を刊行し、論文と書評を中心とする活気に満ちた研究成果を発表しています。私たちは、日本ロレンス協会を、学問的に有意義なだけでなく、楽しい出会いと交流の場所にしたいと思っています。当ホームページに入会方法が記されていますので、興味をお持ちの方は、ぜひご入会ください。

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